2002-02

中国お国めぐり



昔のままの姿を見せる古い町―――浙江省・烏鎮


文/盧愛弛  写真/徐建栄 李群力 盧愛弛 
典型的な江南水郷の町だ。縦横に流れるクリークが町の言わば“路地”。
影絵芝居をするのは70歳のお年寄りだ。
お地蔵様の灯ろう流しも習俗の1つ

    石が敷き詰められたなだらかな道、両側には酒屋や食堂、質屋、染め物屋など古びた木造家屋が軒を連ねている。水の透き通った幅の広い小川が流れ、両岸を結ぶ形の様々な石橋に水閣(水際に建てられた住居)、高低交錯する回廊・・・・・・江南の水郷地帯でも昔のままの姿が最も完全な形で残る。ここが浙江省桐郷県の烏鎮だ。
    烏鎮は浙江省北部に位置し、千年の歴史を有する古い町である。有名な北京と杭州を結ぶ大運河が町を取り巻くように流れ、クリークが網の目のように張り巡らされている。鎮は「十」字形の水系によって4区画に分かれる。千百年このかた、住民は川に沿って家や庭を築き、橋の両端に作業場や店を出してきた。町全体の建築面積の81.54%、16万9600uが古くから残る建物だ。こうした古代建築が、閑静で落ち着いた「古老」の雰囲気を醸し出している。
    烏鎮には名所旧跡が多い。歴史的に文を習う気風があり、宋代から清代にかけてだけでも64人が科挙の殿試に合格して進士に、161人が郷試に合格して挙人の資格を得ている。これは江南地方でも珍しいことだ。昔のままに保存されてきた清代の立志書院は、烏鎮が教育を重んじた証でもある。文学史で重要な地位を占める『昭明文選』を編纂した梁昭明太子もここで学んだことがあり、その記念碑が今でも残っている。文昌閣、翰林府、修真観、古戯台、現代文学の重鎮・矛盾の旧居などは、烏鎮の古い歴史と文化の重みをさらに深く感じさせる。

水閣は烏鎮の独特な建築様式。窓を開ければ、往来する舟から何でも買うことができる。
灯ろう流しは伝統的な習俗
賑やかな「香市」
    烏鎮は花鼓戯や影絵芝居、拳船などの民間芸能と賑やかな香市(いち)で有名だが、最も心打たれるのはやはり「藍印花布」(小さな花模様のある青地の布)だろう。昔、浙江省の農家ではこれが必需品で、カーテンや頭巾、テーブル掛けに使われていた。路地の奥からは今でも「がらんがらん」という機織りの音が聞こえてくる。作業場では青地の長衣を着たお婆さんが孫たちに囲まれながら、ゆったりと機を織っている。習俗を踏襲することが、命と暮らしの一部なのだ。染めの原料は藍草と呼ばれる草で、その根は有名な漢方生薬「板蘭根」に用いられている。腐食した藍草を沈殿させた後、固形の染料「土?」にする。土?を水に溶かすと、水は深緑色に変色し、染めに用いることができる。染物屋と機織り場は同じ路地にあり、数軒も離れていない。染物屋に送られた布は、染めと天日干しを繰り返して藍印花布に染め上がる。小さな白い花模様のついた藍布は実に清純、素朴で、江南地方特有の凛とした美しさをたたえている。
    「杏の花と春の雨の江南」と詠われているように、雨の烏鎮も趣がある。傘をさして石畳を歩くと、両側に並ぶ木造家屋の門の上面に施された彫刻の長い歴史が、まるで雨の雫とともに流れ落ちてくるような気がする。肩を並べて進む小舟、斜めに落ちてくる雨を軽く受け止める川面に、さざなみが1層また1層と広がっていく。水閣、回廊、アーチ橋・・・。「小橋・流水・人家」。江南の水郷地帯の悠々たる趣が自然と肌で感じられる。
    これが烏鎮である。人々は水閣の木製の窓を開けて、漕いで来た小舟から果物や野菜を買う。人々は養蚕も菊の栽培もし、櫂の音と漁師の歌を聞きながら暮らしている。
    烏鎮の人々が羨ましい。歴史が残してくれた人と自然との調和と統一を、こころゆくまで味わっているからだ。今では社会発展の恩恵を受けて、豊かな生活を送れるようにもなった。1999年5月から街の保護と整備が始まった。投入資金は2億元、3−5年後には完成の予定。水質整備、公衆トイレの修築、街の清掃、街路灯の設置など、8000万元の資金を投じた第1期工事はすでに2001年に終わり、烏鎮は昔のままの姿を残す近代的な町に生まれ変わった。ユネスコの調査グループがすでに視察に訪れており、世界文化遺産の候補に上げられている。
雨の烏鎮
古い住宅に残る門叩き
烏鎮では機織りが盛んだ。