2004-05

中国のカメラマン・ 〔連載〕その2



東北トラに魅せられて


    

子供のころ、テレビ番組の『動物の世界』が大好きだった。成長した私は、カメラマンになり、景色、民俗文化、広告などの写真を撮るようになったが、動物に対する愛情は変わることはなかった。動物の中でも、大型のネコ科動物が私の一番のお気に入りだ。過去の2年間に私は4回中国東北地区に行き、野性味溢れる東北トラを撮影した。
東北トラは中国に生息する4種のアジアトラの1種で、最大のネコ科動物だ。大自然の創造物の中で最も完璧な美を備えるトラは、人間に感動と畏敬の念を抱かせる。均整の取れた体躯、屈強な体を彩る美しい縞、獰猛な性格と他を圧する風格、まさに山林の王者と呼ぶに相応しい。トラと聞くだけで私は興奮を覚え、危険、力、勇猛というイメージが頭の中に渦巻く。
撮影では瞬間を捉えることが重要なポイントになる。そのため、トラの生息環境はもちろん、近距離で観察するときに感じるその息使いに至るまで、私は彼らについて深く理解できるようになった。私が彼らに感じるものを一言で表すなら、やはり「畏敬」である。人類の自然界への侵入を許そうとしない彼らは、自ら境界を定めることのできる偉大な支配者である。

2001年1月から私は東北トラをテーマにした撮影を開始した。東北トラの最大の野生化繁殖基地−黒龍江省横道河子東北虎林園が年間で最も冷え込む時期だった。マイナス30℃以下の気温に中で、膝まで雪に埋もれながら毎日5〜6時間山中でトラを探す。これは私にとっても、撮影機材にとっても非常に危険なことである。故障のため、シャッターが下りないこともしばしばだった。雪がシャッターの周辺で氷の層を作るのだ。私はスイス製のサバイバルナイフのピックで氷を削ぎ落としながら撮影を続けた。低温は機材の液晶にも影響を及ぼす。撮影中は鼻で呼吸することもできない。息が当たるカメラの裏側がすぐに凍ってしまい、ファインダーが氷に覆われるのだ。しかし、絶好のシャッターチャンスにめぐり合うと、私はこのことを失念してしまう。結果は毛織の手袋でファインダーをこすり続けるはめに陥る。極寒の地では電池の消耗も激しい。こうした経験から、私は電子機器に頼らす、全くの純粋なアナログ手法で写真を撮ったが、現像された写真には使えないものも多かった。
こちらはこんなに苦労をしているのに、東北トラはこのような苛酷な環境で更に王者の威厳を際立たせる。狩をし、疾走し、気力を奮い立たせ、氷雪をものともしない。逞しい体躯は私を更に敬服させた。東北トラが住処とする過酷な環境こそが、彼らを無敵の王者に育てたのだと、私は思っている。

資料
 東北トラ、別名シベリアトラは主に中国の長白山地域と小興安嶺、ロシアのシベリア、朝鮮に分布している。東北トラの体はトラの中でも最大で、丸い頭部、短い耳と長い尾、太い四肢が特徴である。体調は160〜290センチ、尾の長さは90〜107センチ、体重は180〜200キロ。中国では野生の東北トラは12〜16頭しか確認されておらず、「国宝」のパンダよりも希少な国家一級重点保護動物であり、世界の十大絶滅危惧動物の一つに数えられている。