2004-08

中国のカメラマン



消滅が危ぶまれる極地の自然を残したい
―過酷な撮影に挑み続ける方昆さん

文/小 影
    
北極クマ

地球の南北両極に立つ?これは、ほとんどの人々にとって想像さえできないことである。しかし、今月号で紹介するカメラマンの方昆さんはそれをやってのけた猛者の1人だ。彼は中国極地科学調査隊の科学者とともに、科学調査船「雪龍号」に乗り込み、南極に2度、北極に1度上陸して、中国極地科学調査科学者の研究をその目で確かめ、両極地の壮大で美しい景色を思う存分に楽しんだ。
方昆さんは環境問題を専門とするCCTV(中国中央テレビ局)のベテラン記者で、無人地帯といわれるチベット・青海高原のココシリや、アフリカの未開の集落などを取材したことがある。危険をものともしない方昆さんのこと、極地調査隊の同行記者の話が出たときには、迷わずにこれを引き受けた。危険が伴うことは誰もが知っているが、だからと言って、せっかく巡ってきた数少ないチャンスを逃すことはできない。こうして、方昆さんは最愛のカメラを携えて一行に加わった。その時のことを方昆さんは、「長くカメラマンをしているが、極地に立ったときほど撮影意欲に燃えたことはなかった。人を圧倒するほどの美しさ、世界から隔絶した静寂の世界、人知を超えた神秘を目の前にして、これらをカメラに収めることができるのか、それだけが心配だった」と語っている。

流氷
「北極に来たぞ!」と思わずはしゃぐ隊員たち
極寒の海に生きるカモメ
流氷の航空写真
方昆さん

方昆さんは動物の撮影を今回の北極への旅の主な目的に決めていた。北極にはゾウアザラシや北極クマ、ゴマフアザラシなどがいるが、彼らにどこで出会えるか、また撮影できるのかは誰にも分からない。特にゾウアザラシの撮影は難しい。とても敏感で、少しの物音でも用心して海面に顔を出してくれないからだ。科学調査船が北氷洋を北緯72°まで進んだ時、方昆さんはゾウアザラシを撮影するため、夜の海に浮かぶ流氷を睨み続けた。幾夜も見張り続けたが、感触はなく、もうあきらめようとしていたときに、目の前の海面にゾウアザラシの群れが現れ、彼は興奮しながらシャッターを切ったという。
北極滞在中の2ヵ月間、調査隊が北極クマに出会ったことは1度もなく、帰途に着く前夜、より多くの写真を撮ろうと考えて、方昆さんは他の数人のカメラマンとともに調査船の停泊地から3海里離れた氷原にテントを設営して待機することにした。明け方、「北極クマだ!」という同僚の叫び声を彼は聞く。見れば、かわいらしい北極クマがゆったりとこちらに向かって歩いてくるではないか。北極クマは獰猛な肉食動物で、至近距離からの撮影は殆ど無理と言ってよい。方昆さんたちは襲われる危険を考えて、慌しくシャッターを切って調査船に飛び乗った。北極クマとは対照的に、カモメはとても友好的で、調査船が北氷洋に入った時からずっと船に付き添い、退屈な船上生活の良い息抜きになってくれた。
北極での話をしている間、方昆さんは昨日のことを思い出すように興奮していた。「地球の温暖化が進むにつれ、北氷洋の氷は減りつつあり、その面積も縮小しています。環境が日に日に悪化している北極圏は、いつ『浄土』でなくなってしまうかわかりません。より多くの写真を撮って、消えつつある『浄土』を残したいと思っています」
そこには記録すべきものが多く、チャンスさえあればまた行きたいと、方昆さんは語った。