2004-08

●旅行ガイド特集



歌仙の里―羅城


文/陳瑞群  写真/周開元 黄南 謝盛鉅

広西チワン族自治区には歌仙と呼ばれた劉三姐の伝説がある。彼女はその甘美な歌声で生活を讃美し、正義を主張して人々から敬愛されていた。広西チワン族自治区の北部にある羅城コーラオ族自治県は、中国唯一のコーラオ族の自治県で、全国のコーラオ族の80%以上が集まっている。ここは歌仙、劉三姐の生誕の地でもある。
 「天下第一の風景」と賞賛される桂林に近い羅城の人口は36万、コーラオ族をはじめ、漢、チワン、ヤオ、トン、ミャオなど12の民族が住んでいる。ここは快適な気候に恵まれた美しいカルスト地形で、原始の自然生態形が今も完全に保たれている。桂林ほど有名ではないが、羅城を訪れた観光客は、その美しい山水と少数民族の風情にすっかり魅了されてしまう。

武陽江畔の龍角山
歌垣で意中の人を探すコーラオ族の若い男女

羅城の観光名所
 羅劉姓の家ばかりが集まった城下里郷の藍?村は、歌仙劉三姐の出身地として知られる。村の背後に聳える山には「歌仙・劉三姐」を祀った廟があり、村の前には「三妹橋」、「同心橋」と呼ばれる石畳の橋と石造のアーチ橋がある。伝説では、劉三姐がここでよく歌っていたそうだ。
 羅城の小長安鎮を流れる武陽江の両岸には、数多くの観光名所が散在している。その内の一つ、龍角山はまるで龍の角のように二つの岩山が山の脇に立っている。山を頭にする巨大な龍の体は曲りくねった武陽江である。
 懐群鎮の景色は「桂林にも勝る」とさえ言われている。歳龍瀑布、旦興瀑布、堯河瀑布、肯歳瀑布からなる瀑布群は高さ数十メートルもあり、天下から流れ落ちる銀河のように見える。森林や谷間の中でこだまする地を揺るがすほどの水音を聞くと、この滝を造った大自然の力に感動せずにはいられない。切り立った峡谷の断崖に天然の石橋が架かっている。高さ50m、幅30mのアーチ形をしたこの石橋は「石門」と呼ばれ、周囲では松柏の古木が枝を伸ばし、橋の下には様々な種類の胎生植物が下がっている。
 原始の自然を留めた山々や神秘の森に囲まれた天河鎮には、珍しい禽獣が出没し、人々からで神秘の村と呼ばれている。 
また、北部の宝壇郷には世界的にも珍しい太古の岩石が分布している。実地調査に訪れたスウェーデン、アメリカ、カナダ、オーストラリア、シンガポールなどの10数カ国の専門家も、ここを「自然地質博物館」と賞賛した。

三妹橋

コーラオ族の民俗
 コーラオ族の民家はレンガの壁と瓦屋根で構成され、たいていは2階建てである。平地に築く場合も、山の斜面に築く場合も、まず石を30pから60p積み上げて土台を築く。この土台部分の壁には耐火レンガが使われる。1階は住宅で、2階は倉庫である。コーラオ族の民家の最大の特徴は土間につくられたかまどで、炊事だけでなく、暖房にも使われている。周囲の自然に溶け込んだ彼らの民家には、すでに400年余りの歴史がある。 
 農耕民族にはもともと農耕牛を大事にする習慣があるが、コーラオ族ほど牛を崇拝し、大切にする民族は中国にはないだろう。コーラオ族は旧暦の4月8日を牛の誕生日と定め、毎年この日になると、どの家も牛小屋をきれいに掃除し、牛の体を洗い清め、牛に美味しい餌を与えて農作業を休ませる。そして、楓の葉っぱの汁で蒸した黒いもち米の飯を供えて先祖を祭る。先祖への祭祀が終わると、黒いもち米の飯を団子にして先ず牛に食べさせ、最後に人間が食べる。これは牛に対する敬意を表すためである。
 コーラオ族の男女は、昔から自由恋愛を謳歌してきた。恋人は祭りや村の行事、市などでみそめるか、山で行われる歌垣を通じて選ぶこともある。歌垣は通常、旧暦の春3月と秋8月に行われる。歌垣の季節になると、晴れ着姿の若い男女は連れだって市に繰り出し、歌垣の相手を探す。気に入った相手が見つかれば、一緒に景色のよい山の斜面の芝生に行き、歌を媒介にして互いの心を確かめ合い、合意が得られれば婚約の贈物を贈る。
 さすがは、劉三姐の子孫である。コーラオの人々は羅城の雄大な自然の中で、今日も美しい愛情物語を歌い続ける。

石門を流れる川
90歳になる呉昌富さんの一族からは11人の大学進学者が出ており、村の人々から「才子の家系」と呼ばれ、尊敬されている。
牛の誕生日、旧暦の4月8日の祭りの模様。