2005-04

●中国医学の基礎知識



針灸治療について

文/孟永紅
    
針治療を行う医師。

中国医学を花にたとえるなら、針灸はその花びらの一枚である。針灸は最も早く治療効果が得られる上、簡単な治療法でもある。針とは針で刺すことを言い、針でツボを刺激して治療する。灸は現在ではヨモギの灸を言い、もぐさを直接、あるいは間接的に燃焼させた熱で、患部を刺激する治療法である。治療において、針と灸は往々にして組み合わせて用いられるため、針灸と呼ばれる。
 中国医学は経験を伝承した医学である。針灸もまた、誰がいつ発明したと言えるものではなく、長期にわたる経験と研究の中で形成された治療法で、先祖代々重ねてきた疾病との戦いの中で中国人が得た貴重な経験がその基礎となっている。
早くは石器時代、例えば、石器を製作する過程で、酷使して疲労した手に偶然尖った石などで刺激が加わり症状が軽くなったとか、そのような経験がこの治療法の始まりと考えられる。こうした経験に後々改良が加えられ、石はより尖ったものが使われるようになり、終には錐状に研磨されたものでマッサージして血行を促進し、経絡の循環をよくすることで、患部の治療や健康維持を達成するようになった。このような原始的な針治療に使われた石は「?石」と呼ばれる。やがて青銅器時代、鉄器時代と歴史が進むに連れ、金属製の針が石器に取って替わった。生産力と技術の向上により、用具は絶えず改良され、現在は金針、銀針、銅針、ステンレス針が使用されている。
 灸の起源はおそらく、人類が火の使用を始めた時期にさかのぼるだろう。火の使用中に偶然患部が温まり、温熱に痛みを抑える効果があることを知ったと考えられる。これが中国医薬と結合して生まれたのが、もぐさによる灸治療である。薬草のエキスに温熱が加わることで、各部位の生理機能を調整し、健康を増進して、治療目的を達成するのが灸治療である。
 なぜ、針灸で疾病を治療することができるのか?中国の伝統理論によれば、宇宙のありとあらゆるものは陰陽の二つに区分することができ、健康は陰陽の調和によって維持されるとされている。この調和、或いはバランスが崩れたとき、身体の健康に変調が現れるという思想である。針灸はこの陰陽のバランスを調整することで、健康を回復、維持させる。現代科学による研究でも、針で脳を刺激すると脳内モルヒネが生産され、痛みを抑える効果が得られることが分かっている。また、神経系統に影響を及ぼし、血圧、脈拍、発汗、体温をはじめ、その他の生理機能を調整することができる。この最も顕著な例が、「耳針」である。この療法では、針で耳のツボを刺激することで,食欲を増加させ、便の通じをよくし、心身の疲労感を軽減する。

 

針灸のツボ

針灸の治療原理を説明するには、中国医学の基本理論の一つである「経絡学説」に触れねばならない。中国医学では、「気」を生命活動の原動力とし、人体に流れる「正気」は気の通り道である経絡を通じて全身を循環すると考えている。経絡とは道、連絡を意味し、内には内臓、外には四肢、五官(目、耳、鼻、舌、肌)と、皮毛に連なる。この経絡が流れる体の表面の部位がツボである。針灸はこのツボを刺激して、経絡の流れをよくし、内臓を含む各部分の疾患を治療する。
 また、経絡は人体の内部から外部に連なる道でもある。生理機能が失調をきたしたときや病の気が経絡に入り、何らかの症状が現れたときには、経絡の循環経路に圧迫痛や結節などの明らかな反応が見られる。またその経絡が影響する皮膚の部位にも色艶や温度、形状に変化が現れる。その部分の色を診たり、触診したりすることでその病理を診断し、体表の相応する部位に現れた病理変化から問題が発生している経絡と病んだ部分を究明するのである。こうして経絡の循環と治療すべき症状の特性によってツボに施術する。例えば、呼吸器からウイルスに感染し、喉の腫れや痛み、咳、痰など、肺に熱が溜まってしまったときの症状が現れたなら、医師は手にある肺のツボ、その裏にあたる大腸のツボを刺激して治療を行う。

*針灸治療については、ツボの部位、刺激の仕方のみでなく、用具などにも専門知識が必要になるので、必ず資格のある医師の治療を受けねばならない。観光などで、針のセットやツボの説明書を購入しても、素人治療は危険なので、絶対にしないで下さい。